ホーム > 院長室から > 検死当番スタートの日に起きた、ある出来事

検死当番スタートの日に起きた、ある出来事

昨今、老人の孤独死が増えています。

「近隣の方が訪問したら、亡くなられていた」ということが見受けられることが多くなりました。

かかりつけの先生がいらっしゃれば、その先生が最後の看取りをされることも多々あるのですが、都合によって不在もあります。

そのようなかかりつけの先生が不在の場合、佐伯区では、われわれ佐伯区医師会員が検死をするというシステムがはじまっております。2013年8月からです。

  1. 佐伯区医師会員全員による当番制(内科、外科などを問わず、眼科や皮膚科など、すべての科の開業医)。
  2. 孤独死と思われる事案が発生した場合、警察が現場検証や検死の準備をし、かかりつけ医に連絡し、連絡が取れない場合、当番の医師に連絡。
  3. 医師が現地に赴くことや、佐伯警察署に搬送されたご遺体に、犯罪性のない病死かどうかを当番の医師が判断。
  4. 死亡検案書を担当した医師が書く。

以上がおおまかな業務です。

実は佐伯区では、制度ができる前までは孤独死に対する検死はある一人の医師とボランティア医師の方を中心に進められていました。青木正則先生のお父様にあたる方です。

青木先生は警察から孤独死の連絡を受けられたら、まずそこへ出向かれました。そして警察にご遺体を搬送し、検死までの一連の作業をほぼ一人で引き受けて下さっておりました。
誤解のないように付け加えさせていただきますが、もちろん多数の先生方のお手伝い、ご協力もあってできていたことです。

ただ、その中心的存在の青木先生もお亡くなりになり、新しい検死のシステムを立ち上げざるを得なくなり、できたのがこの制度なのです。

私は小児科・内科の開業医なので、毎日主に乳幼児を診察しておりますが、もちろんお年寄りの方も診療させていただいております。ただ、今までかかりつけということで検死に呼ばれたことは一度もありませでした。

しかし、新しい制度のスタート日に起きたある出来事で、小児科中心の開業医の私も個人の尊厳、人の死について深く考えさせられました。一生忘れられないできごとです。

話は約2年前にさかのぼります。

このシステムが始まった初日、佐伯警察署から電話がありました。

たまたまその日は日曜日でした。私は警察に出向くことなく、検死依頼のあったご自宅に参りました。

その方は70才に近い方で、もともと糖尿病のあった方です。かかりつけの先生はいらっしゃいました。

ですが、かかりつけの先生は旧市内の病院の方だったので、日曜日ということもあり、検死には旧市内から出務できないということだったのです。

というような、いきさつで当番であった私が出務いたしました。

その糖尿病患者の方の朝の生活パターンは決まっていて、ほぼ毎朝7時頃起床されていました。それが日曜日は、朝9時になっても起きてこられなかったのです。
家族の方が不審に思われて、寝室に入ったところ・・・・・

呼吸もなく、冷たくなられていた、ということでした。
すぐに救急車を呼ばれましたが、すでに亡くなられているのは救急隊員の方にも確認でき、警察に連絡が行き、そこで、私が呼ばれ、ご自宅に参上いたしました。

  • 動向散大、呼吸停止、心音停止を確認。
  • 眼瞼(がんけん)の溢血斑(いっけつはん)がないことを確認。
    ※まぶたの下にアズキ大の斑点があれば、窒息死の可能性大。
  • その他の兆候等により、犯罪性のない、病死だということを判断。

そして、死亡検案書を書かせていただきました(死亡診断書とは違います)。

毎日子ども達と接していると、命の尊さを忘れそうになるというか、あまり考える機会がありませんでした。

しかしこの時の、亡くなられたご家族の悲しみの泣き声は、今も耳から離れません。

東京都などは、監察医制度があります。原因不明の孤独死などは、監察医の先生が死亡診断を下すとなっております。

まだ広島などにはそういう制度はありません。地方では我々が先陣を切ってそういう出務をしているということなのです。

これからの社会情勢においては、誰にも知られずにひっそりと亡くなられ方は増えてくると考えられます。

病気の患者さんを治すのも、もちろん医者の仕事です。

しかし万が一、かかりつけの患者さんの死と向き合うことになったとき、亡くなられたご家族に、どのように声をかけたらいいか。

あの一件以来、もっと勉強しなければならないと、私は深く思うようになりました。

にほんブログ村 地域生活(街) 中国地方ブログ 広島県情報へ にほんブログ村 健康ブログ 病気予防へ